天竜区は浜松市の中山間地で大部分が森林であり、かつては林業で栄えました。しかし現在は過疎化が進み、交通インフラの課題による医療や買い物難民、へき地診療所においては医師の高齢化による閉院など、様々な課題を抱えています。
一般社団法人磐周医師会では、平成26年より浜松市の委託を受けて「天竜区在宅医療介護連携協議会」を開設し、多職種連携事業を推進してきました。そしてこのたび、過去10年間にわたる浜松市天竜区におけるTZT(Tenryu Zaitakusien Team)の活動をまとめた「地域医療お助け隊でござる」を出版しました。

TZTの活動を支える上野山庄一医師
まず活動にあたっては、地域の医療提供体制の実態を把握し、住民が医療・介護に対してのどのような不安や希望を持っているか理解することが大切だと考え、地域の現状を調査し把握することから始めました。診療所の医師らに行う調査と訪問によるヒアリングは、ここから毎年続けています。
次に調査の結果から課題を抽出し、解決策を検討していきました。その解決策の一つが「地域支援看護師」です。移動手段がない、ICTの活用が不得手といった患者さんに対し、オンライン診療をサポートをするために、タブレット持参で患者さん宅を訪問します。そこで、医学的視点でのアセスメントや生活状況の確認を行い、画面の向こう側の主治医に適切な情報提供を行うことにより、患者さん・主治医、双方に安心してもらうことができるのです。

患者さん宅に電波が届かず… 青空オンライン診療実施中!
また、専門科の受診先がない実情をカバーするため、眼科や整形外科などの「巡回診療」にも取り組み始めました。
そのほか、多職種に対する研修会活動では、臨床で活かしてもらえるよう、ACPや事例検討など最新の知見を届ける活動も行っています。

ACPへの取り組みの様子
静岡県内の他地域も例外ではなく、まさに県内各地の「近未来図」ともいえるTZTの活動。一足先に取り組むこの活動がこれからの地域医療の参考となればと考え、まとめた一冊です。是非、お読みください!
書籍名:「地域医療お助け隊でござる 上野山医師と仲間たち山を走る、転がる」
著:上野山庄一 犬塚久美子
出版社:株式会社看護の科学新社(2025年2月20日 第1版)